前回は、ファンダメンタルズ全体の地図を確認し、「テクニカルだけでは見えない相場の裏側」について整理しました。
今回のテーマは、その中でもインパクトが大きい事件・事故・天災・テロ・紛争といった“有事”が為替にどう影響するのかという部分です。
大きな地震、戦争の勃発、政変やクーデター、世界を揺らす金融危機──こうしたニュースは、チャート上に「急騰・急落」「窓開け」「異常なボラティリティ」として現れ、テクニカルのルールだけでは説明しにくい動きを生み出します。
第60話では、まず「有事と為替のざっくりした関係」を押さえつつ、リスクオン/リスクオフという考え方、「安全資産」とされやすい通貨の特徴、有事のドル買い・円買いが今も通用するのか、といったポイントをFX初心者向けにかみ砕いて解説します。
細かい政治や歴史を覚える必要はありません。“有事のときに相場がどうなりやすいか”と“そのとき自分はどう守るか”という、大きなパターンと生存戦略だけ持ち帰ってもらえればOKです。
事件・事故・天災・紛争がチャートに映るとき|「有事」と為替の関係
前回は、ファンダメンタルズ分析の全体像と「テクニカルでは見えない相場の裏側」を整理しました。
ファンダ編の最初のテーマとして取り上げたいのが、各国の事件・事故・天災・テロ・紛争といった“有事”が為替にどんな影響を与えるかという話です。
大きな地震のニュース。
戦争やテロが起きたという速報。
政権交代やクーデターの報道。
こうした出来事は、チャート上に「急騰・急落」「ギャップ」「長いヒゲ」「異常なボラティリティ」として現れることが多く、テクニカルのルールだけでは説明しにくい動きを生み出します。
第60話では、まず「有事と為替のざっくりした関係性」を整理しつつ、リスクオン・リスクオフという考え方、通貨ごとの“性格”、そして実務的に「どんなニュースをどう受け止めるべきか」をFX初心者向けにかみ砕いていきます。
細かい歴史や政治の話を暗記する必要はありません。“ざっくりとしたパターン”と“守り方の軸”を持つことをゴールに読んでみてください。
① 「有事」と為替のざっくりした関係
まず、「有事」とは何かをざっくり定義しておきましょう。
FXの文脈でいう有事とは、
・戦争、軍事衝突、テロ。
・大規模な自然災害(地震・津波・洪水など)。
・金融危機や大手金融機関の破綻。
・政治的な大混乱(クーデター、政変、国民投票など)。
といった「人々の安全や経済への影響が大きく、先行きに強い不安をもたらす出来事」を指すことが多いです。
こうした有事が起こると、マーケット参加者は、
・リスクの高い資産から逃げたい。
・比較的安全とされる資産に逃げ込みたい。
という心理になりやすくなります。
その結果として、
・株式や新興国通貨から資金が抜ける。
・「安全」と見なされている通貨や債券に資金が流れ込む。
という、いわゆる「リスクオフの動き」が起こりやすくなります。
逆に、緊張が和らぎ、「最悪の事態は避けられそうだ」という空気が広がってくると、
・再び株式や高金利通貨に資金が戻る。
・安全資産から資金が逆流していく。
という流れが生まれやすくなります。
細かいパターンはたくさんありますが、まずは「有事 → リスクが意識される → 資金の避難先が変わる → 為替レートも動く」という、大まかな流れを頭の片隅に置いておきましょう。
② リスクオン/リスクオフという考え方
有事と為替を考えるうえで欠かせないのが、「リスクオン/リスクオフ」というキーワードです。
ざっくり言うと、
・リスクオン:投資家が積極的にリスクを取りやすい状況。
・リスクオフ:投資家がリスクを避け、安全資産に逃げやすい状況。
を表す言葉です。
リスクオンのときは、
・株高。
・高金利通貨(新興国通貨など)への資金流入。
・コモディティ(原油や金属)市場も活発。
といった動きになりやすく、リスクオフのときは、
・株安。
・新興国通貨からの資金流出。
・「安全」とされる通貨や国債に資金が流入。
という流れが起きやすくなります。
ニュースを見たときには、
・これはリスクオン方向に働きそうな話か。
・それとも、投資家をリスクオフにさせる話か。
というざっくりした方向性をイメージしておくだけでも、その後の為替の動き方が少し読みやすくなっていきます。
「安全資産」とされやすい通貨と、有事のドル・円
③ 「安全資産」とされやすい通貨の特徴
有事になると、「安全資産」とされる通貨にお金が集まりやすくなります。
絶対的なルールではありませんが、一般的には、
・経済規模が大きく、信用力の高い国の通貨。
・政治的に比較的安定している国の通貨。
・金融市場が発達していて、いつでも売買しやすい通貨。
などが、「安全」と見なされやすい傾向があります。
代表的な例としては、
・米ドル(世界の基軸通貨)。
・日本円(かつてから“有事の円買い”と言われてきた)。
・スイスフラン(スイスの政治的・金融的な安定から安全資産とされることが多い)。
などが挙げられます。
ただし、「この通貨はいつでも絶対に安全」ではないことには注意が必要です。
有事の内容や場所、マーケットの状況によって、「どの通貨に逃げ込むか」は変わることがあります。
あくまで、「安全資産になりやすい候補」として、ドル・円・フランの名前を頭の片隅に置いておく程度でOKです。
④ 有事のドル買い・円買いは「昔話」なのか?
昔から、「有事のドル買い」「有事の円買い」という言葉がよく使われてきました。
これは、
・世界的なリスクが高まると、とりあえずドルに資金が集まりやすい。
・アジア危機やリーマンショックなどの局面で、円高が進んだ。
といった過去のパターンから来ている表現です。
とはいえ、最近では、
・アメリカ自身がリスクの震源地になるケース。
・日本の金利が非常に低いことから、「円を借りて他通貨を買う」動きが強まっているケース。
などもあり、「有事=必ず円高」「有事=必ずドル高」とは限らない状況になってきています。
大事なのは、「今の有事はどこが震源地で、どの国や通貨にとってマイナスが大きいのか」をざっくり考えることです。
たとえば、
・アメリカ発の金融危機なら、ドルが一時的に売られることもある。
・日本で大規模災害が起きた直後は、円売りが先行することもある。
といったように、有事の種類や場所によって、「どの通貨が買われるか/売られるか」は変動します。
過去の経験則はヒントになりますが、「常にそうなる」とは決めつけず、ニュースとチャートをセットで確認することが何より重要です。
事件・事故・天災・テロ・紛争の「重さ」とチャートの反応
⑤ 事件・事故・天災・テロ・紛争の“強さ”の違い
一口に「有事」といっても、その“強さ”やマーケットへのインパクトはバラバラです。
たとえば、
・局地的な事故や小規模な事件。
・一時的な政権スキャンダル。
・限定的な軍事衝突。
・世界規模で影響が広がる戦争やパンデミック。
では、マーケットの反応も持続性もまったく違います。
FXトレーダーとしては、
・そのニュースが「一時的なショック」で終わりそうか。
・それとも、「中長期のトレンドを変えうるレベル」か。
をざっくり見極める意識が大切です。
もちろん正確に当てる必要はありませんが、「これは世界規模の話なのか」「特定の国・地域に限定される話なのか」を考えるだけでも、リスクの取り方は変わってきます。
⑥ 有事のニュースがチャートに出る典型パターン
有事が起きたとき、チャートにはどんな形で現れやすいでしょうか。
代表的なパターンとしては、
・突然の大きな窓開け(ギャップ)。
・一方向への急騰/急落。
・上下に長いヒゲを何本もつける乱高下。
などがあります。
大きな事件・事故・天災・テロ・紛争などが報道されると、
・アルゴリズム取引やヘッジの注文が一気に出る。
・ニュースヘッドラインを見た投機筋の売買が重なる。
ことで、短時間に価格が大きく飛びやすくなります。
その後、
・「最初のショックで動きすぎた分」を戻して落ち着くのか。
・そこをスタート地点に、新しいトレンドが始まるのか。
は、ニュースの中身や市場のポジション状況によって変わります。
「有事=必ず大きなトレンド転換」ではなく、「まずは一時的なショック → その後の落ち着き方を見てから判断」という視点を持っておくと、飛びつきトレードを減らせます。
有事のときにFX初心者が守るべき3つのルール
⑦ 実務的にどう守る?有事のときの基本スタンス
大きな有事が起きたとき、FX初心者が一番意識したいのは「攻め方」ではなく「守り方」です。
具体的なスタンスとしては、
・重要な有事ニュースが出た直後は、とりあえず新規ポジションを取らない。
・すでに持っているポジションのリスク(ロット・含み損)を確認する。
・必要なら、一度サイズを小さくするか、いったん全部クローズする。
といった行動です。
「せっかくの大きな動きだから、今こそ稼ぎ時だ」と考えると、どうしても感情が先に走り、ルールから外れやすくなります。
むしろ、「今はプロ同士が戦っている時間帯だから、一旦避難」くらいに構えておくほうが、長期的にはプラスに働きやすいです。
⑧ 普段からできる「有事に備える準備」
有事にうまく対応するには、「起きてから慌てる」よりも、普段からの準備が大事です。
たとえば、
・自分がトレードする通貨ペアに関わる国のニュースを、軽くチェックする習慣をつける。
・重要度の高いイベント(選挙、国民投票、政策会合など)の日程を、経済カレンダーで確認しておく。
・「この日はボラが出そうだから、ロットを落とす/ノートレにする」と事前に決めておく。
といった形です。
また、過去のチャートで、
・大きな戦争や災害があった日の値動き。
・金融危機のときのトレンドの出方。
を振り返っておくと、「こういう時はこんな動き方をしていたのか」という感覚が少しずつ蓄積されていきます。
これもまた、「生き残るためのファンダ勉強」の一部です。
⑨ 「ニュースで一発当てる思考」から距離を置く
最後に、メンタル面の話も少しだけ触れておきます。
有事のニュースが出ると、「この方向に大きく動きそうだから、一発当てたい」という気持ちになりやすいです。
ですが、そこで考えるべきは、
・自分はニュースのプロでもなければ、大口投資家でもない。
・情報のスピードも、資金量も、プロにはかなわない。
という現実です。
個人トレーダーが有事でできるいちばん賢い選択は、
・「今は自分の出番ではない」と認めること。
・まずは資金とメンタルを守ることに集中すること。
です。
「ニュースで一発当てる」よりも、「ニュースで退場しない」ほうが、FXでは圧倒的に大事なスキルだと覚えておいてください。
まとめ|有事と為替は「リスクオン/オフ」と「通貨の性格」でざっくりとらえる
第60話では、各国の事件・事故・天災・テロ・紛争といった「有事」が為替に与える影響について、FX初心者向けに整理しました。
有事が起こると、投資家はリスクを避け、株式や新興国通貨から資金を引き上げて、「比較的安全」と見なされやすい通貨や債券に避難しやすくなること。この資金移動の流れを「リスクオン/リスクオフ」という言葉でざっくり表現していることも確認しました。
そのうえで、米ドル・日本円・スイスフランなどが「安全資産候補」として意識されやすい一方、「有事=必ずドル高・円高」ではないこと、どの通貨が買われる/売られるかは、有事の震源地や影響範囲、タイミングによって変わることも押さえました。
FX初心者にとってより重要なのは、「どう攻めるか」よりも、
・大きな有事ニュース直後は新規エントリーを控える。
・すでに持っているポジションのリスクを確認し、必要ならロットを落とす/一度クローズする。
・「今はプロ同士が殴り合っている時間帯だから一旦離れる」という選択肢を持つ。
といった「生き残るための守りのルール」でした。
さらに、経済カレンダーで重要イベントの日程を事前にチェックしておくこと、自分がトレードする通貨に関係する国のニュースだけでもざっくり追うこと、過去の有事があった日のチャートを振り返って「動き方のパターン」をストックしておくことも、有事に備える実務的な準備として役立ちます。
ニュースで一発当てることよりも、ニュースで退場しないことのほうが、FXでは圧倒的に大切です。有事と為替の関係を「リスクオン/オフ」と「通貨の性格」でざっくり捉えつつ、守りのスタンスを先に決めておくことで、余計な大負けを避けやすくなります。
次回は、有事の話をもう一歩進めて、よく聞く「有事のドル買い・有事の円買いは本当に昔の話なのか?」というテーマを掘り下げながら、歴史的なパターンと最近の傾向を比較し、通貨ごとの“性格”をより具体的に見ていきます。
【投資に関する注意】
本記事の内容は、筆者の個人的な見解であり、特定の通貨ペアや金融商品の売買を推奨するものではありません。
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