前回は「経済指標は結果そのものではなく、市場予想とのギャップで読む」という考え方を整理しました。
とはいえ、実際の経済カレンダーを見ると、世界中でほぼ毎日のように指標が発表されています。「正直、多すぎて何を見ればいいのか分からない……」と感じてしまうのが普通です。
そこで第63話では、FX初心者がまず押さえておきたい「重要度の高い経済指標の見分け方」と「優先順位のつけ方」に絞って解説します。
為替と相性のいい4つのジャンル(①金利・金融政策 ②インフレ ③雇用・賃金 ④景気・企業マインド)に整理しつつ、「自分がトレードする通貨ペアに関係する国」「経済カレンダーの★3指標」「自分専用の重要指標リスト」の作り方まで、実務目線で噛み砕いてお届けします。
全部の指標を追いかける必要はありません。何を見るかだけでなく「何をあえて見ないか」も含めて、経済指標とのちょうどいい距離感を一緒に作っていきましょう。
重要度の高い経済指標をどう見分けるか
前回は、「経済指標は結果そのものではなく、市場予想とのギャップで読む」という話をしました。
とはいえ、世界中で毎日のように指標は発表されています。
「正直、多すぎて何を見ればいいのか分からない……」と感じるのが普通です。
そこで第63話では、FX初心者がまず押さえておきたい「重要度の高い経済指標」の考え方を整理していきます。
全部を追いかける必要はありません。
「何を見るか」と同じくらい、「何をあえて見ないか」を決めることも大事です。
今回は、経済カレンダーの★重要度を頼りにしつつ、「どういう種類の指標が為替に効きやすいのか」「自分にとっての優先順位をどう作るか」を、一緒に言語化していきましょう。
① そもそも「重要度が高い指標」とは何か
経済カレンダーを見ると、指標ごとに★マークや「重要度:高・中・低」といったランクが付いています。
まず押さえておきたいのは、ここでいう「重要度が高い指標」とは、
・発表時に為替や株、債券が大きく動きやすい。
・その後の金融政策(金利)や景気判断に影響を与えやすい。
・プロのトレーダーや機関投資家が特に注目している。
といった「マーケット全体へのインパクトが大きい指標」のことです。
単純に「件数が多い指標」でもなければ、「ニュースでよく聞くから重要」というわけでもありません。
「金利と景気の見通しに効くかどうか」が、重要度を決める一番の基準だと考えておくとシンプルです。
そのうえで、為替に直結しやすいジャンルを4つに分けて眺めてみましょう。
FXで特に意識したい4つの指標ジャンル
② 為替に直結しやすい4つのジャンル
為替と相性がいい指標は、ざっくり分けると4つのジャンルに整理できます。
それが、
・金利・金融政策に関わるもの。
・インフレ(物価)に関わるもの。
・雇用・賃金に関わるもの。
・景気・企業マインドに関わるもの。
の4つです。
このうち、FXの世界で「最重要」と言っていいのが、
金利・金融政策と、インフレに関わる指標です。
なぜなら、通貨の価値は長期的には「金利差」で決まりやすく、金利の行方は「インフレの強さ」に大きく左右されるからです。
雇用や景気指標も、結局は「金利をどうするか」を判断する材料のひとつとして見られています。
指標の名前に振り回される前に、「これは4つのうちどのジャンルか?」と分類してみるだけでも、重要度のイメージがつかみやすくなります。
③ 金利に直結する指標がなぜ最重要なのか
FXは「異なる国の通貨の交換」です。
その通貨を持っていると、どれくらいの利息(金利)がもらえるのか。
それが、長期的な通貨価値を決める大きな要素になります。
たとえば、
・アメリカの金利が上がりそう。
・日本の金利はなかなか上がりそうにない。
となれば、ドルを持っていたほうが有利です。
このとき、マーケットが注目するのが、
・政策金利の発表や中央銀行の声明。
・インフレ指標(CPI・PCEなど)。
・雇用や賃金がどれくらい強いか。
といった「今後の金利の方向性を示すヒント」です。
だからこそ、金利とインフレに関係する指標は、どの通貨ペアを触るにしても“最重要クラス”になりやすいわけですね。
反対に、「その国の小売売上高」「鉱工業生産」といった指標は、悪くないけれど、金利やインフレほど為替への直結度は高くありません。
重要指標を見極める第一歩は、「これは金利にどれくらい関係する数字か?」という視点を持つことです。
④ 雇用・インフレ・景気の“セット”で考える
もう少しだけ踏み込むと、
・雇用(失業率、雇用者数、賃金)。
・インフレ(CPI、PCE、物価関連)。
・景気(GDP、PMI、景況感指数など)。
は、それぞれバラバラな数字というより「セットで景気の状態を映している」と考えると分かりやすいです。
雇用が強い→賃金が上がる→消費が増える→物価が上がる→インフレが強くなる→中央銀行が金利を上げる。
ざっくり言えば、こうした流れで繋がっています。
なので、「この指標だけを追えばOK」というものはなく、
・雇用は強いけど、インフレは落ち着いてきている。
・インフレはまだ高いけど、景気が減速してきている。
といった全体の組み合わせをざっくり把握するイメージが大事です。
もちろん最初から完璧に理解する必要はありません。
「この数字は雇用」「これはインフレ」「これは景気」とラベルを貼るところから始めていくだけでも、ニュースの見え方は変わってきます。
経済カレンダーの★マークをどう使うか
⑤ 経済カレンダーの★マークとの付き合い方
多くの経済カレンダーには、「★1〜3」や「重要度:低・中・高」といったランクがついています。
これは、「過去の実績としてマーケットがどれくらい反応しやすかったか」をざっくり示したものです。
初心者のうちは、
・まずは★3(重要度:高)の指標だけに集中する。
・★2は余裕が出てきたら少しずつ意識する。
・★1は一旦無視でもOK。
くらいの割り切りで十分です。
「全部見よう」とするほど、逆に何も頭に残らなくなるので、優先順位を付ける勇気を持ってください。
そのうえで、★3の中でも、金利・インフレ・雇用・景気の4ジャンルどれに属するかを意識していくと、「どの数字がより重く扱われやすいか」が少しずつ見えてきます。
⑥ 通貨ペアによって「重要な国」は変わる
もうひとつ、大事なポイントがあります。
それは、「どの国の指標が重要かは、通貨ペアによって変わる」ということです。
たとえば、ドル円をメインでトレードするなら、
・アメリカ(USD)と日本(JPY)の重要指標。
・とくにアメリカ側の金利やインフレ、雇用。
が中心になります。
ユーロドルなら、
・ユーロ圏(EUR)とアメリカ(USD)の指標。
ポンド円なら、
・イギリス(GBP)、日本(JPY)、そして場合によってはアメリカ(USD)。
といった具合に、「その通貨ペアに関わる国の★3指標」を優先して見ればOKです。
世界中すべての国の指標を追う必要はまったくありません。
むしろ、「自分が触る通貨ペアに関係する国以外は、基本スルー」くらいでちょうどいいです。
トレードスタイル別|指標の優先順位の付け方
⑦ 短期トレードと中長期トレードで違う優先順位
あなたのトレードスタイルによっても、「どの指標を重く見るか」は変わります。
たとえば、数分〜数時間の短期トレードなら、
・その日の重要指標の「時間」と「直前直後のボラ」。
・スプレッド拡大のタイミング。
・「触る時間帯」と「避ける時間帯」の区別。
といった「時間帯とリスク管理寄りの情報」のほうが重要になります。
一方、数日〜数週間のスイングトレードなら、
・政策金利、インフレ、雇用、GDPといった「トレンドの土台になる指標」。
・それらが「強い方向にサプライズしているか」「弱い方向にサプライズしているか」。
を重視して、通貨の「強弱の土台」を考えることが大事になります。
同じ経済指標でも、スキャルパーとスイングトレーダーでは見ているポイントが違う、ということですね。
まずは自分がどの時間軸で戦うのかを決め、その時間軸に合った指標だけを優先していきましょう。
⑧ 初心者が陥りがちな「見すぎ」と「追いすぎ」
経済指標を意識し始めると、よくある落とし穴が2つあります。
ひとつめは、ニュースやカレンダーをチェックしすぎて、
・「この指標も大事そう。」
・「あのコメントも気になる。」
と情報過多になり、チャートが見えなくなってしまうパターンです。
ふたつめは、
・指標の結果を見て、そのたびにシナリオをコロコロ変える。
・「今日は指標があるからノートレ」「明日もあるからノートレ」になってしまう。
という「追いすぎ・怖がりすぎ」のパターンです。
大事なのは、「見るべき指標」と「気にしない指標」を自分なりに線引きすることです。
そして、指標はあくまで「背景」として扱い、最終的なエントリー・決済はテクニカルで決める、という役割分担を崩さないことです。
⑨ 自分専用の“重要指標リスト”を作る
最後に、実務的な話をひとつ。
本当に力になるのは、
・自分がトレードする通貨ペア。
・その通貨ペアに関係する国。
・その国の中で、★3(重要度:高)の主な指標。
を一覧にした“自分専用の重要指標リスト”を作ることです。
たとえば、ドル円なら、
・米:政策金利、FOMC、雇用統計、CPI、PCE、GDP、ISM、Fed要人発言。
・日:日銀会合、金融政策決定会合、総裁会見、CPI、GDPなど。
といった具合に、「これだけは必ずチェックする」という指標を5〜10個ほどピックアップしておきます。
そして、
・毎週はじめに「今週、このリストの指標はいつあるか」を経済カレンダーで確認する。
・その時間帯は、新規エントリーを避ける/ロットを落とすなど、ルールを事前に決めておく。
このルーティンができるだけで、指標に振り回される回数はぐっと減ります。
「世界中全部の指標を理解する」のではなく、「自分の通貨ペアにとって大事な指標だけを、しっかり押さえる」ことを目標にしてみてください。
まとめ|「全部見る」のではなく「絞って深く理解する」
第63話では、「重要度の高い経済指標をどう見分けるか」というテーマで、指標のジャンル分けと優先順位のつけ方を整理しました。
まず大枠として、為替と相性がいい指標は、①金利・金融政策 ②インフレ ③雇用・賃金 ④景気・企業マインドの4ジャンルに分類できること。そして、通貨価値を左右する「金利」の行方に直結する金利・インフレ関連の指標が最重要クラスであることを確認しました。
また、経済カレンダーの★マークは「過去にどれくらい市場が反応してきたか」の目安であり、初心者はまず★3(重要度:高)の指標に絞る、★2は余裕が出てきたら、★1はひとまず無視──くらいの割り切りで十分であることも押さえました。
さらに、
・通貨ペアによって、見るべき国の指標は変わること(例:ドル円なら米国+日本)。
・短期トレードでは「指標の時間帯とボラ」「避けるべき時間帯」が重要で、中長期では「金利・インフレ・雇用・景気の流れ」が通貨の強弱に効いてくること。
・ニュースや指標を“見すぎ・追いすぎ”てチャートが見えなくなるのを避けること。
といったポイントも確認しました。
最終的なゴールは、世界中すべての指標を理解することではなく、「自分がトレードする通貨ペアにとって重要な指標だけをリストアップし、その前後でどう動きやすいかを自分の目で検証していくこと」です。
「全部見る」のではなく、「絞って深く理解する」。このスタンスを持てるようになると、経済指標との距離感はぐっとラクになります。
次回は、今回の土台をもとに、数ある指標の中でも特に存在感の大きいアメリカの主要経済指標にフォーカスし、「なぜ米指標が世界中のトレーダーにとって特別なのか」「具体的にどの指標を押さえるべきか」を詳しく見ていきます。
【投資に関する注意】
本記事の内容は、筆者の個人的な見解であり、特定の通貨ペアや金融商品の売買を推奨するものではありません。
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