ここまでの連載では、ダウ理論やトレンドライン、移動平均線、MACDなど、さまざまなテクニカル指標やラインの使い方を見てきました。
ただ、実際のチャートの前に立つと「どこで入ればいいのか」「今は順張りなのか逆張りなのか」と迷ってしまい、気がつけば強い流れに逆らうポジションを持ってしまうことも少なくありません。
そこで第38話では、テクニカルの細かいテクニックよりも一段上の視点として、「相場の流れに乗る」とは具体的にどういうことかを、押し目買い・戻り売りのイメージも交えながら整理していきます。
上位足で大きな流れをつかみ、ラインや移動平均線で押し目・戻りのゾーンを決め、下位足ではタイミングだけを探す──そんなシンプルなステップに分解して考えられると、「そろそろ反転しそう」という感覚任せのトレードから卒業しやすくなります。
FXを「当て物」ではなく、流れに乗って期待値を積み上げるゲームとして捉え直すきっかけにしてもらえたらうれしいです。
相場の「流れに乗る」とはどういうことか
ここまでの連載で、ダウ理論やトレンドライン、移動平均線、MACDなど、さまざまなテクニカルを見てきました。
第38話のテーマは、そのすべてを貫く考え方ともいえる「相場の流れに乗ること」です。
「流れに乗れ」と言われても、実際のチャートの前に立つと、つい天井や底を狙いたくなってしまうもの。
ここではまず、「流れに乗る」とは何をしていて、「流れに逆らう」とはどんな状態なのかを、具体的なイメージで整理していきましょう。
① 「流れ」に逆らうトレードとは何か
「流れに逆らう」というと難しく聞こえますが、実際にはとてもシンプルです。
日足でずっと安値を切り下げているのに、
「そろそろ上がるだろう」と、根拠のない買いを入れてしまう。
4時間足で何度も高値を更新しているのに、
「さすがにもう高すぎる」と、チャートの形を無視して売りで入ってしまう。
このように「自分の感情」や「そろそろ」という主観を優先して、客観的なトレンド方向に逆らうことが、まさに流れに逆らうトレードです。
もちろん、結果的にそれでうまくいくこともあります。
ですが、長期的に見れば、強い流れに逆らい続けるほど、コツコツ負けが積み上がりやすくなっていきます。
② 「流れに乗る」=高値掴みではない
「流れに乗る」と聞くと、「そんな高いところで買いたくない」「安いところで買って、高いところで売りたい」と感じる人も多いはずです。
この感覚そのものは自然ですが、それを優先しすぎると、「安く見えるから買う」「高く見えるから売る」という、値ごろ感トレードにハマってしまいます。
流れに乗るというのは、決して天井で買うことでも、底で売ることでもありません。
安いところで買うのではなく、「上がっている最中に、その一部を取らせてもらう」という発想に切り替えることが大事です。
底と天井を当てにいくのではなく、真ん中の“おいしい帯”だけを狙うイメージですね。
そのためにも、流れそのものを認識する視点と、流れの途中でどこまでを自分の取り分にするかという割り切りが必要になってきます。
③ 一方向に偏りすぎないためのバランス
とはいえ、「流れに乗る」を意識しすぎると、今度はどんな場面でも「とりあえず順張り」と考えてしまう危険もあります。
レンジ相場の真ん中で、方向感のない中、どうにか順張りしようとしても、単にノイズに振り回されるだけです。
ここで必要になるのが、「トレンド相場なのか、レンジ相場なのかをまず見分ける」という前提の一歩です。
上位足ではっきりトレンドが出ているのか。
それとも、一定の価格帯の中で行ったり来たりしているだけなのか。
流れに乗る意識を持ちながらも、「流れが出ていないところでは無理して乗らない」というブレーキをセットで持つことが、結果的に資金を守ることにつながります。
流れに乗るための環境認識手順
では、実際のトレードで「流れに乗る」ためには、チャートをどんな順番で見ていけばいいのでしょうか。
ここでは、難しい理論よりも、実務で使えるシンプルな環境認識のステップを3つに絞って紹介します。
① 上位足で「大きな流れ」を確認する
いきなり5分足や1分足から見ると、チャートは常に上下に動いているため、「今どっちに流れているのか」が非常に分かりにくくなります。
そこでまずは、日足や4時間足といった上位足から、トレンドの有無と方向を確認するところから始めましょう。
安値と高値が切り上がっているのか、切り下がっているのか。
長期の移動平均線が右肩上がりなのか、右肩下がりなのか。
そして何より、「パッと見で上なのか下なのか、パッと分かる状態かどうか」を自問してみてください。
パッと見て分からない相場は、そもそも無理に手を出す必要がない場面である可能性が高いです。
② 押し目・戻りのゾーンをラインで決める
上位足で大きな流れが確認できたら、次は「どこが押し目・戻りの候補になりそうか」をラインで大まかに決めていきます。
過去に何度も反応している水平線。
トレンドラインやチャネルライン。
そして、代表的な移動平均線(たとえば20MAや50MAなど)。
こうした「他のトレーダーも意識しやすい場所」に、価格が戻ってきたときこそ、押し目買い・戻り売りを検討できるゾーンになってきます。
完璧にピンポイントで当てにいくのではなく、「この辺りは、買い方・売り方の意識がぶつかりやすいエリアだな」と、少し幅を持って見てあげるのがコツです。
③ 下位足でタイミングだけを探す
上位足で流れとゾーンが決まったら、最後に下位足(1時間足や15分足など)に切り替えて、エントリーのタイミングだけを探します。
ここで初めて、ローソク足のパターンや、MACD・ストキャスなどのオシレーターが登場します。
下位足での役割は、「ゾーンに近づいてきたところで、流れが再び元の方向に向き直したかどうか」を見極めることです。
ゾーンにタッチした瞬間に慌てて飛びつくのではなく、
何本かローソク足が出るのを待ち、ヒゲの出方や安値・高値の切り替わり方を観察してから入っていく。
この「待つ」というプロセスが、衝動的なエントリーを減らし、結果的に流れに乗りやすくしてくれます。
押し目買い・戻り売りで流れに乗る具体例
ここからは、上昇トレンドでの押し目買い、下降トレンドでの戻り売りという形で、流れに乗るトレードのイメージをもう少し具体的に見ていきましょう。
① 上昇トレンドの押し目買いイメージ
日足で高値・安値を切り上げている、素直な上昇トレンドをイメージしてください。
価格は一直線に上がり続けるわけではなく、上がっては少し押し、また上がっては押し、という波を描きます。
この「押してきたところ」が、押し目買いの候補になるゾーンです。
具体的には、4時間足や1時間足に切り替えて、
・前回の高値がサポートに変わりそうなライン
・トレンドラインに近づいているポイント
・20MAや50MA付近まで押してきた場面
といった場所を探していきます。
そこに価格が到達したあと、15分足や5分足で高値・安値の切り替わりや、MACDの勢いの変化を確認し、「下落の流れが一度落ち着いて、再び上方向を向き直した」と感じられるタイミングで、小さく乗っていくイメージです。
② 下降トレンドの戻り売りイメージ
下降トレンドの戻り売りは、基本的に押し目買いの逆です。
日足で安値・高値を切り下げている場面で、「今は売りが優勢」という前提を持ちます。
そのうえで、価格が一度上に戻ってきた局面、つまり戻りの途中を狙います。
4時間足や1時間足で、
・過去に何度も反発しているレジスタンスライン
・下降トレンドラインに近づいているポイント
・下向きの20MAや50MAまで戻ってきた場面
などに注目し、その周辺が「戻り売りゾーン」となります。
そのゾーンに入ったあと、短期足で高値の切り下がりや、MACDのデッドクロス、オシレーターの反転などを確認し、「上昇の戻りが終わり、再び下落方向に流れが戻った」ところを拾っていく感覚です。
③ 押し目・戻りが機能しないときの考え方
もちろん、押し目買いや戻り売りがいつもきれいに機能するわけではありません。
むしろ、押し目だと思ったところからさらに下がることもあれば、戻り売りのつもりが、そのままトレンド転換になることもあります。
ここで大事なのは、「押し目だから勝てる」「戻りだから安心」という考えを捨てることです。
押し目・戻りとはあくまで、
・損切り幅を抑えやすい
・流れに乗れたときに、値幅を取りやすい
という「リスクリワードの条件が比較的良くなりやすいポイント」であって、勝利が約束された場所ではありません。
だからこそ、シナリオが崩れたと感じたら、素早く損切りして退くこと。
「押し目だから」「戻りだから」と、理由をつけて粘り続けないことが、流れに乗るトレードと、流れに逆らって溺れてしまうトレードを分けるポイントになります。
流れに乗るためのメンタルと期待値の話
最後に、流れに乗るトレードを続けていくうえで欠かせない、メンタル面と期待値の考え方について触れておきます。
① 流れに逆らうのは「プライドトレード」になりやすい
強いトレンドに逆らってポジションを持つとき、多くの場合、その裏側には「自分の予想が当たってほしい」というプライドが潜んでいます。
チャートを見れば見るほど、「そろそろ反転しそうだ」「こんなに上がったんだから戻るはずだ」と、自分のストーリーに説得力を持たせたくなります。
でも、相場は私たちの気持ちを一切知らないし、配慮もしてくれません。
プライドを優先すると、損切りが遅れ、ナンピンを重ね、結果として大きな損失につながりやすくなります。
「自分が当たること」ではなく、「生き残り続けること」を最優先にできるかどうかが、流れに乗るトレードを続けられるかの分かれ目になってきます。
② 当てるゲームではなく、期待値のゲーム
流れに乗るトレードを受け入れるには、「FX=未来を当てるゲーム」という考えを手放す必要があります。
私たちがやっているのは、
・勝つときはいくらぐらい取れて
・負けるときはいくらで済ませて
・そのセットを何十回、何百回と繰り返すか
という、期待値のゲームです。
流れに乗るトレードは、一回一回の勝ち負けではなく、「流れに沿っているかどうか」という条件そのものが、長期的な期待値を押し上げてくれます。
反対に、流れに逆らうトレードは、たとえたまたま当たったとしても、その行動パターンが習慣化すると、トータルではマイナス期待値に寄っていきやすくなります。
③ 小さく負けて、大きく取ることを受け入れる
流れに乗るトレードを続けるには、「小さく何度も負ける」ことを受け入れる必要があります。
押し目だと思って入ったのに、もう一段押してしまう。
戻りだと思って売ったのに、さらにもう一段戻される。
こうした小さな損切りは、流れに乗るトレードにつきものです。
しかし、その代わりに、一度しっかりと流れに乗れたときには、損切りの何倍もの値幅を取ることができます。
「勝率よりも、平均損益のバランスを重視する」という発想を持てるようになると、流れに乗るトレードが一気にやりやすくなります。
勝ったり負けたりを繰り返しながらも、口座残高が右肩上がりになっていれば、それが正しい方向に進んでいる証拠です。
まとめ|流れに乗るための「3つの視点」を持とう
第38話では、「相場の流れに乗る」というテーマで、考え方と具体的な手順を整理してきました。
大事なポイントは、次の3つです。
ひとつ目は、上位足で大きな流れを確認すること。
日足や4時間足でトレンドの方向を決め、「今は買い目線が有利なのか、売り目線が有利なのか」をはっきりさせてから、下位足を見るようにします。
ふたつ目は、ラインや移動平均線で押し目・戻りのゾーンを決めること。
過去に意識された価格帯や、トレンドライン・移動平均線などをもとに、「この辺りで一度止まりやすいかも」というエリアを先に決めておくイメージです。
みっつ目は、下位足ではタイミングだけを探し、感情ではなくルールに従うこと。
ゾーンに入ってきたあと、ローソク足の切り替わりやMACDの勢いの変化を確認しながら、小さな損切りを受け入れつつ、大きな流れの一部を取らせてもらう姿勢を大事にしていきましょう。
次回は、この「流れに乗る」という考え方を、複数の時間足を組み合わせたマルチタイムフレーム分析の視点から、さらに深く掘り下げていきます。
【投資に関する注意】
本記事の内容は、筆者の個人的な見解であり、特定の通貨ペアや金融商品の売買を推奨するものではありません。
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