ここまでで、ダウ理論・トレンド・ライン・インジケーターといったテクニカルの基礎から、ニュースや経済指標といったファンダメンタルズの基礎まで、一通り見てきました。
そこで多くの人が一度は思うのが、「結局、ファンダとテクニカルってどっちをどのくらい信じればいいの?」という疑問です。ニュースを見るたびにシナリオが揺れたり、テクニカルで立てたプランをファンダでひっくり返したりしてしまうケースも少なくありません。
第66話では、このモヤモヤを整理するために、「ファンダは環境認識と危険時間帯の把握」「エントリーと決済はあくまでテクニカル」という役割分担を軸に、実際の組み立て方を解説します。
具体的には、ファンダを使ったざっくりした方向づけ→IF-THEN形式でのシナリオづくり→エントリー条件をテクニカルだけで決める流れ→損切り・利確もチャート基準で固定する考え方、さらにCPI・雇用統計のケーススタディまで扱っていきます。
ニュースに“振り回される側”から、“距離感をコントロールできる側”へ。そんな一歩を、一緒に踏み出していきましょう。
ファンダを意識しつつ、あくまでテクニカルでエントリーと決済を組み立てる
ここまでで、テクニカルの基礎からインジケーター、ファンダメンタルズまでひと通り見てきました。
そろそろ出てくる素朴な疑問が、これです。
「結局、ファンダとテクニカルって、どっちをどのくらい信じればいいの?」
第66話では、このモヤモヤをスッキリさせるために、ファンダを“背景”として生かしつつ、エントリーと決済はあくまでテクニカルで組み立てる方法をまとめていきます。
「ニュースや指標は見たほうがいいのは分かったけど、トレードの判断はチャートで決めたい」。
そんな人向けの、“ちょうどいい距離感”の作り方です。
① ファンダとテクニカルの「役割分担」を決める
まず最初に決めておきたいのは、ファンダとテクニカルの「役割分担」です。
ここがあいまいだと、ニュースを見るたびにシナリオがコロコロ変わってしまいます。
このシリーズでおすすめしているのは、次のような分け方です。
・ファンダの役割 → 「環境認識」と「危険時間帯の把握」。
・テクニカルの役割 → 「具体的なエントリー・損切り・利確の条件」。
もう少し噛み砕くと、
・ファンダで「今はドル買いが入りやすい環境か?」をざっくり把握する。
・テクニカルで「どこで買う/どこで切る/どこで利確するか」をミリ単位で決める。
というイメージです。
ファンダは、方向とリスクの“ざっくり地図”。
テクニカルは、実際に歩くときの“足元の地図”。
この2つを混ぜずに持つことが大事なんですよね。
② ファンダでやってはいけない3つのこと
次に、あえて「やってはいけない使い方」から押さえておきます。
ファンダに手を出したばかりの初心者が、ほぼ確実にハマる罠が3つあります。
1つめ。
ニュースを見て、その場の感情でポジションを変えること。
「米指標が良かった→ドル買いっぽい→ロング増やそう」。
「要人が弱気発言→ヤバそう→全部決済しよう」。
そのときのニュースに気持ちが引っ張られて、もともとのテクニカルの根拠が吹き飛びます。
2つめ。
「ファンダ的には上がるはず」と言いながら、実際のチャートには逆らうこと。
チャートがダウントレンドでも、「インフレが高いからドルは上がるはず」と逆張りで買い続けてしまう。
3つめ。
ファンダに都合のいいニュースだけを集めてきて、「自分のポジションを正当化する材料」に変えてしまうこと。
負けが込んできたときほど、これは危険です。
この3つを避けるだけでも、「ファンダを知ったせいで負ける」パターンのかなりの部分はカットできます。
③ ステップ1:環境認識は「ファンダ+上位足チャート」でざっくり方向を決める
ここからは、実際の組み立て手順をステップに分けていきます。
ステップ1は「環境認識」です。
やることはシンプルで、
・今のファンダ環境。
・週足や日足レベルのチャート。
この2つを軽く重ねて、「ざっくり、どっちをメインで狙うか」を決めるだけです。
たとえばドル円なら、
・最近の米指標 → インフレはまだ高めで、FRBはタカ派寄り。
・週足チャート → 上昇トレンド継続中で、高値と安値を切り上げている。
こういう状況なら、
「基本スタンスは押し目買い。売るとしても短期の戻り売りで深追いしない」
といった方向づけができます。
逆に、
・インフレが落ち着き始め、利下げ観測がじわじわ出ている。
・週足では長期の上昇トレンドが止まり、レンジ入りしている。
こういう場面なら、
「上も下も追いかけすぎない。レンジ戦略寄りで軽めにやる」など、戦い方のモードを決められます。
この段階では、まだエントリーのポイントを探さなくてOKです。
あくまで「今週〜今月、どっちに味方したほうが楽そうか」を決めるだけ。
この一手間で、無駄な逆張りの半分くらいは減っていきます。
④ ステップ2:IF-THENで“シナリオ”を言葉にする
ステップ2では、環境認識をもとに「もし◯◯なら、△△する」という形でシナリオを組み立てます。
いきなりテクニカル条件に飛びつくのではなく、「どんな動きになったら入るのか」を文章で決めておくイメージです。
さっきのドル円の例なら、
・IF:日足レベルの押し安値を割らずに、4時間足で上昇トレンドを再開したら。
・THEN:1時間足で押し目を作ったところを買いで狙う。
とか、
・IF:重要な米指標(CPIなど)の後も、高値更新が続いているなら。
・THEN:短期的な下落は「押し目候補」とみなして買い場を探す。
といった感じです。
このIF-THENがあると、
「条件がそろうまで待つ」ということがやりやすくなります。
ニュースを見てからエントリーボタンを連打するのではなく、「自分のパターンが出たらやる」というモードに切り替わるわけですね。
⑤ ステップ3:エントリー条件はテクニカル“だけ”で決める
ステップ3で、ようやくエントリーの話です。
ここでのポイントはただひとつ。
「エントリー条件は、テクニカルだけで決める」というルールを徹底することです。
たとえば、
・上位足のトレンド方向に対して。
・水平線やトレンドライン、レジサポラインの近くで。
・ローソク足のプライスアクション(ピンバー、包み足など)が出たら。
・移動平均線やボリンジャーバンドで「押し」「戻り」と判断できる位置なら。
こういったチャート上の条件がそろったときだけエントリーするわけです。
このとき、「さっきニュースでドル買い材料が出たからプラス1ロット増やそう」といった感情は、一旦横に置きます。
ファンダは「今は買い目線で押し目を探そう」と決める材料。
どこで押し目買いするかは、テクニカルの仕事。
ここを混同しないことが、長期的に安定していくためのカギになります。
⑥ ステップ4:損切りと利確もテクニカル基準で固定する
エントリーとセットで考えるべきなのが、損切りと利確です。
ここでも同じルール。
「損切りと利確の位置も、テクニカルだけで決める」ことを徹底します。
・損切り → 直近の押し安値/戻り高値の外側。
・利確 → 直近の高値/安値、チャネルライン、フィボナッチ、上位足のレジサポなど。
といった「チャートを見れば誰でも同じ場所に引ける目印」を基準にします。
ファンダ的な材料が途中で変化しても、原則として損切り位置は動かしません。
「雇用統計が良かったから、もうちょっとだけ耐えよう」と、損切りを広げるのが一番危ないパターンです。
利確についても、
・チャネル上限に届く前に、米指標がある → 一部でも利確しておく。
といった「テクニカル+イベント」の合わせ技はありですが、基本ラインは変えません。
ルールがブレるときは、たいていファンダを言い訳にしているときなので要注意です。
⑦ ケース1:CPIが強かった日のドル円をどう扱うか
ここからは、イメージしやすいようにケーススタディです。
例として、「米CPIが予想より強く出て、ドル買いが入りやすい環境になった」とします。
このとき、やりがちなNGは、
・CPIのヘッドラインを見て即座にドル円ロング。
・その直後の乱高下でロスカット。
・「やっぱりファンダは難しい」と落ち込む。
という流れです。
そうではなく、
1. CPIが強かった → 「インフレがしぶとい=高金利長期化=ドル買い材料」と認識。
2. 週足・日足でドル円のトレンドを確認 → まだ上昇トレンド継続なら、「押し目買いスタンス」を再確認。
3. 4時間足・1時間足で、「CPI後の乱高下が落ち着き、再度高値を試しに行く動き」が出るまで待つ。
4. 1時間足や15分足で、押し安値を切り上げる形が出たところで、ラインやMAを根拠に押し目買い。
こんな流れで考えます。
重要なのは、
・CPI強い → 「方向性の参考」。
・実際のエントリー → 「テクニカルの形が整ってから」。
という時間差をちゃんと取ることです。
⑧ ケース2:雇用統計が弱かったからといって逆張りしない例
次は逆のパターン。
「雇用統計が予想より弱く、ドル売りが出た」ケースを考えてみます。
ここでの典型的な失敗は、
・長期的にはドル高トレンドなのに。
・雇用統計の弱さだけを見て、「これはトレンド転換だ!」と短期でドル売りに全力。
・数日後に元のトレンドに戻されて踏み上げられる。
というパターンです。
こういうときに意識したいのは、
「弱い指標1発で長期トレンドがひっくり返ることはそう多くない」という現実です。
むしろ、
・一時的にドルが売られて、上昇トレンドの「押し」を作った。
・それが重要なサポートゾーンで止められた。
という形で、押し目買いのチャンスになるケースも多いです。
なので、
・週足・日足のトレンドに逆らって大きなポジションを取らない。
・下がったあとの「戻り」の形をテクニカルで確認してから、改めて方向を決める。
といった、落ち着いた対応が大事になってきます。
⑨ 自分用テンプレートに落とし込んで、毎回同じ手順で考える
最後に、この「ファンダ+テクニカル」の組み立て方を自分用テンプレートにしてしまいましょう。
ノートやメモアプリに、次のような項目を作っておきます。
1. 今のファンダ環境メモ。
例:米インフレ高止まり、FRBタカ派寄り。ドル買い優位。
2. 上位足チャートの環境認識。
例:週足・日足上昇トレンド継続。押し目買いスタンス。
3. IF-THENシナリオ。
例:IF 日足の押し安値を割らずに、4時間足が高値更新したら → THEN 1時間足の押しでロング検討。
4. エントリー条件(テクニカルのみ)。
例:水平線+トレンドライン+MA+ローソク足パターンの組み合わせ。
5. 損切りと利確のルール。
例:損切りは直近安値の少し外側。利確はチャネル上限 or 前回高値。
6. 重要指標・イベントの日程。
例:今週のFOMC・雇用統計・CPIの日時と対応方針。
このテンプレを毎週・毎日軽く埋めていくだけで、
「なんとなくニュースを見て、なんとなくチャートを見て、なんとなくエントリーする」
という状態から、かなり卒業できます。
大事なのは、頭の中だけでやらないこと。
ちゃんと言葉と数字にして、同じ手順で何度も繰り返すこと。
これが、「勝てるセンス」ではなく「勝てる型」を身につける近道です。
まとめ|ファンダは「環境認識」、エントリーと決済は「テクニカル」の仕事にする
第66話では、ファンダメンタルズとテクニカルをどう共存させるかについて、「役割分担」と「具体的な手順」を整理しました。
まず大切だったのは、
・ファンダの役割は「環境認識」と「危険時間帯の把握」に限定する。
・テクニカルの役割は「エントリー・損切り・利確の具体的な条件を決める」ことに集中させる。
というシンプルな分け方でした。
そのうえで、
1. 今のファンダ環境(金融政策・経済指標の流れ)と週足・日足チャートを重ねて「ざっくりどちらに味方するか」を決める。
2. 「もし◯◯なら、△△する」というIF-THEN形式でシナリオを言葉にする。
3. 実際のエントリー条件は、水平線・トレンドライン・MA・ローソク足パターンなどテクニカルだけで決める。
4. 損切りと利確の位置も、直近の高値・安値やチャネルライン、フィボナッチといったチャート上の根拠で固定し、ファンダを理由に後から動かさない。
という4ステップを紹介しました。
また、CPIが強く出た日や雇用統計が弱かった日のドル円を例に、
・指標のヘッドラインを見て即エントリーするのではなく、乱高下が落ち着いてから「本流の方向」をチャートで確認すること。
・弱い指標1発で長期トレンドがひっくり返るとは限らないこと。
・ファンダを「逆張りの言い訳」に使わないこと。
といった現実的な注意点も確認しました。
最後に、
・今のファンダ環境メモ。
・上位足チャートの状況。
・IF-THENシナリオ。
・エントリー条件/損切り・利確のルール。
・今週の重要指標スケジュール。
といった項目をまとめた「自分用テンプレート」を作り、毎回同じ手順で埋めていくことを提案しました。
ファンダとテクニカルは、どちらが正しいかを争わせるものではありません。ファンダで「地図」を描き、テクニカルで「足場」を決める──この役割分担がハマってくると、ニュースに振り回される回数は確実に減っていきます。
次回は、この「ファンダ+テクニカル」の考え方をさらに一歩進めて、ニュースや指標にメンタルを乱されないためのマイルール作りをテーマに、実際のルール例やチェックリストを紹介していきます。
【投資に関する注意】
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