ニュースや経済指標の意味、その付き合い方、そして振り回されないためのマイルール作り──ここまでで、ファンダメンタルズの基礎はかなり整ってきました。
とはいえ、実際のチャートを前にすると「雇用統計の日はどう見ればよかった?」「CPIで乱高下したとき、どこからが“本流”だったんだろう?」と、具体的なイメージが湧きにくいことも多いはずです。
第68話では、経済指標・要人発言・イベントがあった日のチャートを“後から”振り返るためのケーススタディに取り組んでいきます。雇用統計・CPI・要人発言といった典型パターンを題材に、「イベント前の流れ」「発表直後の初動」「数時間〜数日後に出た本流」をどう切り分けて見るかを具体的に解説します。
あわせて、チャートと経済カレンダーを並べて検証する手順、共通してチェックすべき5つのポイント、トレードノートに残すための記録テンプレートまで紹介します。
「何となく過去チャートを見る時間」を、「次に同じ場面が来たときのための仕込み時間」に変える。そんな視点で、一緒にケーススタディを進めていきましょう。
経済指標・要人発言・イベント時のチャートを「後から」振り返るケーススタディ
ここまでで、ニュースや経済指標の意味、そしてマイルールの作り方まで整理してきました。
いよいよ今回からは、実際のトレードに近い形で「イベントがあった日のチャートを、どうやって後から振り返るか」をケーススタディ形式で見ていきます。
大事なのは、「あのときこうしておけばよかった…」とただ反省することではありません。
「同じような場面がもう一度来たら、こう立ち回る」と具体的な行動レベルまで落とし込むことです。
第68話では、雇用統計・CPI・要人発言といった典型的なイベントを題材にしながら、チャートと経済カレンダーを並べて振り返る手順、チェックすべきポイント、トレードノートへの書き方までを具体的に整理していきます。
「過去チャートを何となく眺める」ではなく、「材料を知ったうえでパターンを抜き出す検証」に変えていきましょう。
① ケーススタディの前に:なぜ「事後検証」が効くのか
まずは、そもそも「イベント日のチャートを後から振り返ること」にどんな意味があるのかを整理しておきましょう。
一言でいえば、「リアルタイムでは見抜けなかったパターンを、落ち着いて抽出できる」からです。
雇用統計やCPI、要人発言の最中は、とにかく値動きが速くなります。
チャートも、スプレッドも、情報も一気に動くので、その場で冷静に「これはよくあるパターンか?」なんて考えている余裕はほとんどありません。
でも時間が経って、チャートが完成したあとならどうでしょうか。
・指標の前に、どんな値動きがあったのか。
・発表直後の「初動」はどちらに向かって、どれくらいのボラだったのか。
・数時間〜数日後には、結局どちら側にトレンドが出たのか。
これらを落ち着いて見られるようになります。
大事なのは、「そのとき勝てたかどうか」ではありません。
「次に似たようなチャートとイベントが重なったとき、自分は何を待ち、何をしないと決めておくか」を言語化することです。
事後検証は、未来の自分へのメモを作る作業だと思ってもらうと、グッと取り組みやすくなります。
② ケース1:雇用統計の日のドル円を振り返る
最初のケーススタディは、王道パターンの「米雇用統計の日のドル円」です。
雇用統計の日は、「とりあえず見ておきたいイベント」として多くのトレーダーが意識しています。
ここでの事後検証では、次のような流れでチャートを追っていきます。
1つめ。
指標発表の数時間前までの値動きをチェックします。
・その日は朝からトレンドが出ていたのか。
・それともレンジ気味で方向感がなかったのか。
・直近の高値・安値、レジスタンス・サポートの位置はどこだったか。
これを確認したうえで、
2つめ。
指標発表の「直後5〜15分」の動きを切り出します。
・一方向に一気に走ったのか。
・一度上に振ってから、真逆に急落したのか。
・スプレッドがどれくらい開いていそうな動き方をしているか。
そのあとで、
3つめ。
1時間足・4時間足に切り替えて、「雇用統計のあと、どちら側にトレンドが出たか」を確認します。
ここでよくあるのが、
・発表直後の初動とは逆方向に、じわじわと「本流」が伸びている。
・もともとの日足トレンド方向に、改めて勢いがついている。
といったパターンです。
事後検証の目的は、「この雇用統計を取れていたか?」ではなく、
「指標の瞬間は触らず、1時間足・4時間足の“本流”だけ狙えばよかった場面はどこか」を探すことです。
これを何パターンも見ていくと、自分の中に「雇用統計の日にやるべきこと/やらなくていいこと」が蓄積されていきます。
③ ケース2:CPIで乱高下したあとの「本流」を見る
次は、インフレ指標として注目度が高いCPI(消費者物価指数)の日を題材にします。
CPIは、金利の行方を占ううえで重要視されやすく、最近では雇用統計以上にボラティリティが出ることも少なくありません。
事後検証では、まず、
・「予想」と「結果」の差(インフレが強かったのか弱かったのか)。
・指標のあと、ドルインデックスやドル円がどちらに動いたか。
をメモしておきます。
そのうえでチャートを見ると、
・発表直後に上下に激しく振れたあと、どちらか一方にじわじわトレンドが出ている。
・一度戻してから、数時間後に「本命方向」に再度動き始めている。
といった形が見えてくるはずです。
このとき大事なのは、
「CPIが強かったから買い」「弱かったから売り」ではなく、
「CPIのあと、チャートがどのタイミングで“落ち着いて”、どこでトレンドが出始めたか」を探すことです。
実際に、
・15分足や1時間足で乱高下ゾーンを囲って、「ここは入らない」と決める範囲を目で確認する。
・その外側で、押し目買いや戻り売りの形が出た場所にマークをつける。
こうやって、チャート上に「危険ゾーン」と「狙いたいゾーン」を書き分けていくと、次のCPIにも応用しやすくなります。
④ ケース3:要人発言で急落したユーロ円のパターン
3つめのケーススタディは、要人発言でユーロ円が急落した場面です。
要人発言は、事前に時間が読めるものもあれば、突然ヘッドラインが飛んでくるものもあります。
ここでは、「急落したあとのチャートをどう扱うか」にフォーカスして見ていきましょう。
事後検証で見るべきポイントは、ざっくり3つです。
1つめ。
急落の前に、ユーロ円はどんな位置にいたか。
・日足や4時間足で見ると、高値圏のもみ合いだったのか。
・それとも、すでに下落トレンドの途中だったのか。
2つめ。
急落の安値は、どのレベルで止まったのか。
・過去のサポートライン付近か。
・フィボナッチやチャネルラインのどこかに当たっているか。
3つめ。
急落のあと、
・一度大きく戻してから、再び売られているのか。
・それとも、V字で全戻ししてしまったのか。
これらを確認したうえで、
「この急落を見たあと、自分はどんな行動を取るべきだったか」を考えます。
たとえば、
・V字で戻すことが多いなら、「急落の直後は手を出さない」ルールで正解。
・戻りが浅く、戻り売りポイントを何度も作るタイプの下落なら、「戻りを待って売る」パターンを事後検証で整理しておく価値がある。
といった形で、次に活かせそうな部分だけを抜き出していきます。
チャートと要人発言のタイミングをセットで見ることで、「急落の日に絶対やらないこと」「やってもいいとしたらどこか」が、少しずつ明確になっていきます。
⑤ 事後検証で共通して見るべき5つのポイント
ここまで雇用統計・CPI・要人発言と3つのケースを見てきましたが、事後検証でチェックする項目は共通しています。
おすすめは、この5項目テンプレです。
1. イベント前の流れ。
→ その日は上昇トレンドなのか、レンジなのか、下落なのか。
2. 初動の方向と大きさ。
→ 指標直後にどちらに何pips動いたか。高値・安値をどのくらい更新したか。
3. 本流が出始めたタイミング。
→ 乱高下が落ち着き、明確なトレンドが出たのは何時間後か。
4. 自分が入りたかった/入るべきだったポイント。
→ 上位足の方向と揃った押し目買い・戻り売りの位置はどこか。
5. 次同じようなパターンが来たらどうするか。
→ 「初動は無視して◯時間後に形が出たらやる」など、行動レベルのルール。
この「5項目」をテンプレにしておくと、どのイベントの日を振り返るときでも、同じ軸で比べられるようになります。
大事なのは、毎回別のことを書かないことです。
同じフォーマットで観察していくことで、「よくあるパターン」と「例外的なパターン」が見えてきます。
⑥ チャート+経済カレンダーを並べて振り返る手順
次に、実際にどうやって振り返るか、手順を具体的にまとめておきます。
おすすめの流れは、こんな感じです。
1.まず経済カレンダーで、その週・その月の主なイベント(雇用統計・CPI・FOMC・要人発言など)をピックアップする。
2.気になる日を1つ選び、その日のドル円 or メイン通貨ペアのチャートを、5分足・15分足・1時間足・4時間足で順番に確認する。
3.チャート上に縦線やマークで、「指標発表の時間」「要人発言が出た時間」を記入する。
4.イベント前後の動きを、「初動」と「本流」に分けて眺める。
5.先ほどの5項目テンプレに沿って、ノートに簡単にメモする。
これを週に1〜2日分やるだけでも、だんだんと「イベント日の値動きのクセ」が見えてきます。
ポイントは、チャートだけ見ないことです。
「何も知らずにチャートだけを見る検証」と、「イベント内容や発表時間を知ったうえで見る検証」では、得られる学びの質がまったく違います。
⑦ トレードノートにどう書くか:記録テンプレート例
では、実際のトレードノートにはどう書けばいいのか。
ここでは、シンプルだけど続けやすいテンプレート例を1つ紹介します。
――――――――――
・日付:◯年◯月◯日(米雇用統計)
・通貨ペア:ドル円
・イベント前の流れ:日足上昇トレンド、当日ロンドン時間から押し目形成。
・初動:指標直後に上へ+40pips、その後すぐ全戻し。
・本流:発表から2時間後、4時間足で高値更新 → その後+120pipsの上昇。
・入りたかったポイント:1時間足で押し安値を切り上げたタイミング(◯時頃)。
・次同じパターンなら:指標直後の初動は完全スルー。2時間後に1時間足を確認し、押し目候補だけを見る。
――――――――――
このくらいのシンプルさで十分です。
重要なのは、「次に同じパターンが来たらどうするか」まで必ず一行書くことです。
それを書いておくことで、ただの「過去の感想」ではなく、「未来の行動指針」に変わります。
⑧ 週次・月次ルーティンに組み込んで「型」にする
最後に、この事後検証を「たまにやる勉強」ではなく、ルーティンにする話をして締めましょう。
おすすめは、
・週に1回、「今週のイベント日」を1〜2日ピックアップして振り返る。
・月に1回、「印象に残ったイベント3つ」をまとめて見直す。
というペースです。
最初は時間がかかるかもしれません。
でも、テンプレートを使い回せるようになると、1日分の振り返りは10〜15分ほどで終わるようになっていきます。
「トレードした日だけノートを書く」のではなく、「トレードしていない日にもノートを書く」。
この積み重ねが、相場の「流れのクセ」を身体で覚えていく近道です。
イベント日に一喜一憂する側から、「イベント日をパターンとして蓄積していく側」へ。
第68話の内容を、あなたの週次・月次ルーティンに少しずつ織り込んでいってみてください。
まとめ|イベント日を「その日の結果」で終わらせず、「次へのパターン」として蓄積する
第68話では、雇用統計・CPI・要人発言といったイベントがあった日のチャートを、事後検証でどう振り返るかをケーススタディ形式で整理しました。
ポイントは、リアルタイムに「当てられたかどうか」を反省するのではなく、「次に似た場面が来たら、どこを待ち、どこは絶対に触らないか」を決める材料にするという発想でした。
具体的には、
・雇用統計の日のドル円では、「指標前の流れ」「発表直後の初動」「数時間後に出た本流」を分解して、初動を無視して本流だけを取りにいくイメージを学ぶこと。
・CPIの日は、「予想と結果のギャップ」「ドルの反応」を確認しつつ、15分〜1時間足で乱高下ゾーンと“落ち着いた後”のトレンドゾーンを塗り分けて、危険地帯と狙いたい地帯を視覚的に切り分けること。
・要人発言で急落したユーロ円では、「急落前の位置づけ(高値圏か、下落トレンド中か)」「どこで止まり、どこまで戻したか」「V字全戻し型か、戻り売り型か」を確認し、急落日でも“やっていいパターン/やらないほうがいいパターン”を区別すること。
そのうえで、どのイベント日でも共通して使える5項目テンプレとして、
1. イベント前の流れ(トレンド or レンジ)。
2. 初動の方向と大きさ(どちらに何pips動いたか)。
3. 本流が出始めたタイミング(乱高下が落ち着いたのは何時間後か)。
4. 自分が入りたかった/入るべきだったポイント。
5. 次に同じパターンになったらどう行動するか。
を紹介しました。
さらに、チャートと経済カレンダーを並べて見る手順や、「日付・イベント名・初動・本流・次どうするか」を書くだけのシンプルなトレードノートテンプレも提示しました。大事なのは、毎回バラバラに書かず、同じ型で積み重ねることです。
イベント日は、リアルタイムでは怖く感じますが、事後検証でパターンとして蓄積していけば、少しずつ「おなじみの展開」が増えていきます。
その日の勝ち負けで一喜一憂して終わらせるのではなく、「次への仕込み」を毎回1つ増やしていく。この感覚さえ持てれば、ニュースや指標のある日は、むしろ経験値を稼ぐチャンス日に変わっていきます。
次回は、こうして集めたイベント日のパターンを踏まえつつ、自分のトレードルール全体を文章として“設計図レベル”でまとめる方法をテーマに、「マイルールの文章化」と「定期的なメンテナンス」のやり方を解説していきます。
【投資に関する注意】
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