ここまでの連載で、チャートの見方・テクニカル指標・ニュースや経済指標との付き合い方・マイルールの作り方・事後検証のやり方まで、一通りの「FXで生き残るための部品」が揃ってきました。
とはいえ、その部品がバラバラのままだと、いざトレードするときに「その場の気分」や「直前のニュース」によって判断が揺れやすくなります。 頭の中ではルールを決めているつもりでも、感情が動いた瞬間にあっさり書き換えられてしまうんですよね。
第69話では、これまで学んできた内容を1本の線でつなぐために、「自分のトレードルールを文章として書き出す」ことをテーマにします。
トレードの目的や守るべき原則といった“憲法レベル”の話から、エントリー・損切り・利確の条件、資金管理・ロットの決め方、日次・週次・月次ルーティンの流れまでを、3つの階層(理念/具体ルール/運用)に分けて文章に落とし込む方法を解説します。
完璧なものをいきなり作る必要はありません。 まずは「Ver1.0」としてたたき台を作り、そこから少しずつ育てていく──そんな感覚で読み進めてみてください。
自分のトレードルールを「文章」として形にする方法
ここまでで、テクニカル・ファンダ・マイルール・事後検証と、FXで長く生き残るための土台を積み上げてきました。
いよいよ今回のテーマは、これらを1本の線でつなぐ作業──つまり、「自分のトレードルールを文章として書き出す」ことです。
頭の中では「なんとなく決めている」つもりでも、実際に文字にしてみると、抜けている部分やあいまいな部分がたくさん見つかります。
第69話では、トレードルールを「理念 → 具体ルール → 日々の運用」という3階層に分けて、初心者でも書きやすいテンプレートに落とし込む方法を解説していきます。
完璧なルールを一気に作る必要はありません。 まずは「たたき台」をつくって、少しずつバージョンアップしていくイメージで読んでみてください。
① なぜトレードルールを「頭の中」ではなく「文章」にするのか
まず最初に整理しておきたいのが、「なぜわざわざ文章にするのか?」という話です。
理由はシンプルで、頭の中のルールは、感情が動いた瞬間に簡単に書き換わってしまうからです。
「1回の損失は資金の2%までにしよう」と思っていたのに、実際に連敗すると「今回だけは3%まで許容しようか」と変わってしまう。
「指標直後は触らない」と決めていたのに、いざ大きく動くと「これはチャンスかも」と飛び乗ってしまう。
このように、「頭の中のルール」は、その場の気分や雰囲気に負けがちです。
だからこそ、「どんなときでも変わらない基準」を紙やデジタルノートに書いて残しておく必要があります。
文章にしておけば、
・エントリー前に読み返せる。
・破ってしまったときに、「どのルールを破ったのか」が特定できる。
・改善したいときに、どこをどう変えたかが一目で分かる。
といったメリットがあります。
トレードの安定度は、「ルールの良し悪し」だけでなく「ルールの“外に出ない”仕組み」にも大きく左右されるんですよね。
② トレードルール文書は3階層で考える
いきなり細かいルールを書き始めると、どんどんカオスになっていきます。
そこでおすすめなのが、トレードルール文書を「3階層」に分けて考える方法です。
ざっくり分けると、次の3つ。
・レベル1:理念・目的・守るべき原則(自分の軸)。
・レベル2:エントリー/損切り/利確ルール(手法の骨格)。
・レベル3:資金管理・ロット・ルーティン(運用の具体手順)。
この3階層で書いておくと、
・レベル1はめったに変えない。
・レベル2は、検証を通して少しずつ改善していく。
・レベル3は、生活リズムや資金量の変化に応じて柔軟にアップデートする。
といったように、「どこは固定で、どこは変えていいのか」が分かりやすくなります。
全部をごちゃ混ぜにしないことが、ルール文書を長く使い続けるコツです。
③ レベル1:トレードの目的と守るべき原則を書く
まずは、一番上の階層である「目的と原則」から書いていきます。
ここは、いわばあなたのトレード人生の「憲法」のような部分です。
具体的には、次のようなことを書きます。
・トレードの目的。
例:月間で資金を◯%増やすこと。 生活資金を一気に稼ぐのではなく、長期的に増やすことを目的とする。
・絶対に守る原則。
例:「退場しないことを最優先にする」「口座資金の◯%以上を1度に失うトレードはしない」。
・自分が目指すスタイル。
例:デイトレ中心/スイング中心、トレンドフォロー型、逆張りは例外的にしかやらない 等。
・自分の弱点と、それをカバーする方針。
例:連敗するとロットを上げたくなる → 「連敗3回でその日は終了」「連敗2回目からロットを半分に落とす」など。
ここに書くのは、「チャートのテクニック」ではなく、「自分がどうありたいか」と「絶対に外したくない軸」です。
この部分が決まっていると、ルールの細部を変えるときにもブレにくくなります。
④ レベル2:エントリー・損切り・利確ルールを具体化する
次に、実際の売買に直結する「エントリー・損切り・利確」のルールを書いていきます。
ここでのポイントは、「誰が読んでも同じ判断になるレベルまで具体的に書く」ことです。
NGな書き方の例は、こんな感じ。
・「なんとなくトレンドが出ていそうなら押し目買い」。
・「違和感を覚えたら利確」。
こういう抽象的な表現は、感情次第でどうとでも解釈できてしまいます。
代わりに、例えばこんなふうに書きます。
・エントリー条件(買いの場合)。
1)4時間足・1時間足ともに上昇トレンド(高値・安値切り上げ)。
2)1時間足で、直近高値をブレイクしたあとに押し目をつける。
3)押し目が、水平線 or トレンドライン or 移動平均線(◯期間)のいずれかに重なっている。
4)そのポイントで、反転を示すローソク足(ピンバー・包み足など)が出現。
→ 1〜4のうち、最低3つがそろったときだけエントリーを検討する。
・損切りルール。
→ 直近の押し安値の少し下(スプレッド+α)に置く。 1回の損失は口座の◯%以内。
・利確ルール。
→ 直近の高値/チャネル上限/上位足のレジスタンスラインなど、事前に決めた目標のうち最も手前のもの。
こんなふうに「条件」を箇条書きにしておくと、チャートを見ながらチェックボックス感覚で判断できるようになります。
⑤ レベル3:資金管理とロットのルールを数字で固定する
3つめの階層は、「資金管理」と「ロット」のルールです。
ここは、感覚ではなく「数字」で決めるのが鉄則です。
書き方の例を挙げると、こんな感じです。
・1回のトレードでリスクにさらしてよい金額。
例:口座残高の2%まで。 残高が100万円なら1回の最大損失は2万円。
・1日に許容する最大損失。
例:口座残高の4%に達したら、その日のトレードは即終了。
・連敗ストップルール。
例:連続3敗 or その日の負けが◯pipsを超えたら、その日はトレードしない。
・ロットの決め方。
例:「(許容損失金額)÷(損切りまでのpips)=1pipsあたりの許容金額 → ロット換算」という計算式をルール化。
こうして数字で決めておくと、「今日は調子がいいからいつもより多めに…」といった感情トレードをしにくくなります。
資金管理のルールは、「勝ち方」ではなく「負け方」をコントロールするためのものです。
「この枠内に収まっている限り、大きくは死なない」という安全ラインを先に引いておくイメージで書いてみてください。
⑥ 日次・週次・月次ルーティンを文章にしておく
トレードルールというと、「どこでエントリーするか」「どこで損切りするか」に意識が向きがちです。
ですが、実は「いつ・何を・どの順番でやるか」というルーティンも、同じくらい大事なルールの一部です。
例えば、こんなふうに書いておきます。
・日次ルーティン。
1)トレード開始前に、4時間足と1時間足で環境認識。
2)経済指標カレンダーで、これから数時間の重要指標をチェック。
3)エントリー候補通貨ペアを2〜3つに絞る。
4)トレード終了後に、エントリー理由と結果を簡単にノートへ。
・週次ルーティン。
1)週末に、1週間のトレードを振り返る。
2)「ルール通りにできたトレード」と「ルールを破ったトレード」をそれぞれ1つずつピックアップ。
3)翌週の重要指標とイベント日をあらかじめカレンダーに書き込む。
・月次ルーティン。
→ 月末に、勝ち負けの集計とともに、「ルール文書を見直すかどうか」を考える時間を30分取る。
このように、生活のリズムとセットでルールを書いておくと、「なんとなくその日その場で判断する」割合が減っていくのを実感できるようになります。
⑦ ルールを書きすぎない・変えすぎないためのコツ
ここまで聞くと、「あれもこれもルールにしなきゃ」と思うかもしれません。
ですが、ルール文書でありがちな失敗が2つあります。
・細かく書きすぎて、自分でも読み返さなくなる。
・トレードのたびに変えてしまい、何が本当のルールなのか分からなくなる。
これを避けるためのコツは、
「ルール化するのは“何度も同じ失敗をしたところ”だけにする」ことです。
1回きりのイレギュラーな失敗まで全部ルールに入れてしまうと、文書がどんどん分厚くなってしまいます。
逆に、
・指標直後に飛び乗ってやられた。
・連敗後にロットを上げて傷を広げた。
・レンジの真ん中で何度も往復ビンタされた。
こういった「何度も繰り返してしまう負けパターン」だけは、必ずルールとして書き加えます。
また、ルールを変えるのは、
・最低でも1ヶ月〜3ヶ月分の検証データがあるとき。
・「変えた結果、ここが明らかに良くなった」と言える根拠があるとき。
に限定するのがおすすめです。
感情に合わせてコロコロ変えないこと。 ルールの修正にも「ルール」をかけるイメージですね。
⑧ バージョン管理で「育つルール」にしていく
最後に、トレードルール文書を「作って終わり」にしないための工夫をひとつ。
それが、ルール文書に「バージョン」を振るというやり方です。
例えば、
・2025年1月版:トレードルール Ver1.0
・2025年4月版:トレードルール Ver1.1(資金管理部分を修正)
・2025年10月版:トレードルール Ver2.0(手法構成を大きく見直し)
といった形で、ファイル名や文書の冒頭に「Ver1.◯」のように番号をつけておきます。
こうしておくと、
・「この時期はどんなルールでやっていたのか」。
・「どこをどう変更した結果、成績が良くなった/悪くなったのか」。
を、あとから振り返りやすくなります。
最初から完璧なVer10.0を目指すのではなく、小さなVer1.0から始めて、検証と経験を通じて少しずつバージョンアップしていく。
そんなイメージで、自分のトレードルールを「育てていく」感覚を持ってもらえると、この第69話の狙いはバッチリです。
次は、ここで作ったルール文書を土台にしながら、シリーズ全体のまとめと「この先、何を伸ばしていくか」という話につなげていきましょう。
まとめ|頭の中のルールを外に出して、「育てていく設計図」にする
第69話では、これまで学んできたテクニカル・ファンダ・マイルール・事後検証を1本の線でつなぐために、自分のトレードルールを文章として形にする方法を整理しました。
まず押さえておきたかったのは、「頭の中のルールは、感情が動いた瞬間に簡単に書き換わる」という現実でした。 だからこそ、紙やデジタルノートに書き出して、「どんな状況でも変わらない基準」として残しておくことが重要でした。
そのうえで、トレードルール文書を、
・レベル1:トレードの目的・スタイル・絶対に守る原則(憲法部分)。
・レベル2:エントリー/損切り/利確の条件(手法の骨格)。
・レベル3:資金管理・ロット・日次/週次/月次ルーティン(運用の手順)。
という3階層に分けて書くことで、「どこはめったに変えないのか」「どこは検証を通じて少しずつ改善していくのか」を分かりやすくしました。
レベル2の売買ルールでは、「なんとなく上昇トレンドなら押し目買い」のような曖昧な表現をやめて、
・4時間足・1時間足ともに高値安値の切り上げが続いていること。
・直近高値ブレイク後の押し目であること。
・水平線やトレンドライン、移動平均線が重なるポイントであること。
・反転を示すローソク足パターンが出ていること。
といったチェック項目ベースの書き方にすることで、「誰が読んでも同じ判断になる」精度まで落とし込みました。
レベル3の資金管理では、「1回の損失は口座の◯%まで」「1日の最大損失は◯%まで」「連敗◯回でその日は終了」といった“数字のルール”を決め、ロットの計算式もあらかじめ文章化しておくことで、感情でロットを動かさない仕組みを作りました。
また、日次・週次・月次のルーティンも、「いつ・何を・どの順番でやるか」を書き出し、「その日その場の思いつきで動かないための型」にしました。
一方で、ルール文書の落とし穴である「書きすぎ」と「変えすぎ」を避けるために、
・ルール化するのは「何度も繰り返してしまう負けパターン」だけにすること。
・ルールの変更は、一定期間の検証結果が出てからにすること。
・ルールそのものにも「修正のルール」をかけること。
を確認しました。
最後に、ルール文書にはバージョン番号(Ver1.0/1.1/2.0…)を振り、いつどこをどう変更したのかを分かるようにしておくことで、「作って終わり」ではなく「経験と検証を通じて育っていくルール」に変えていく考え方も紹介しました。
トレードルールは、最初から完璧である必要はありません。 小さくてもいいので、自分だけのVer1.0を作ってみること。 それを書き、守り、少しずつ磨いていくプロセスこそが、安定して勝ち続けるトレーダーへの最短ルートです。
次回はいよいよ、ここまでの学びを総まとめしながら、「この先どこを重点的に伸ばしていくべきか」「どんな練習メニューを組めばいいか」といった、シリーズ完結に向けたラストパートに入っていきます。
【投資に関する注意】
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